日本最初の古楽器コレクター
31日、ツァー中休みのフォルテピアノの御機嫌伺い(猛暑の中の旅で御老体結構お疲れの様子)の後、先日の美術館コンサートの際に開催を知った千葉の古楽器展へ。豪華な装飾の琵琶や琴、笛など素晴らしい日本の古楽器が多数展示、中には平安時代というの物もあり千年前の楽器が現存しているとは日本人としては誇らしい限り。今回展示の古楽器は紀州藩十代藩主徳川治宝(1771-1852)が莫大な費用と労力を掛けて収集したコレクションだったとか。我が国には昔から正倉院という公的なコレクションはあるものの、この殿様こそ日本で最初の古楽器コレクターというべき存在では。後の紀州藩十五代の殿様がパイプオルガンやチェンバロをいち早く日本に紹介した我国西洋古楽の恩人たる徳川頼貞(1892-1954)というのも不思議な縁ですね。ただこの昭和の殿様は西洋音楽にうつつを抜かし過ぎて(?)巨万の財産を食い潰してしまい、御先祖様から伝わった貴重な古楽器コレクションも昭和二十八年に売却してしまったそうな・・・。そのコレクションが回りまわって現在この博物館に収まったとの事。実はこの昭和の殿様、まだ先代が健在でただの「放蕩息子」だった頃、先代がかの南葵文庫を設立した際に「日本初のコンサートホールを建設したい」「そのホールに本格的なパイプオルガンを設置したい」という当時としては天文学的に金の掛かる事を息子の分際で言いだしながら、音楽にあまり興味の無い先代がスンナリ放蕩息子の夢物語に同意したのも、御先祖様に日本一の古楽器収集家がいたからでしょうね。長年の謎が解けました。展示されている古楽器の中には昔活躍しながら消滅してしまった「幻の古楽器」を江戸時代に資料から復活させた「復元楽器」もあり興味深々(何やら見た目がモダンチェンバロに通じる質感でしたが) 西洋での古楽復興運動に先んじる事約百年、我国で古楽器復興があったとは驚きでした。
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