昭和一六年のチェンバロ事情
30日、歌のコンサートにフレンチで出動。会場入り前に久々に神保町に寄り道し御馴染みのK書店で音楽資料漁り。日本のチェンバロ導入史の調査のために戦前の音楽雑誌などを立ち読みするも中々目指す記事が見つからず苦慮していると「国会図書館に行って調べた方が早いですよ」と店の御主人のありがたいアドヴァイスを頂戴するも(それでは商売にならないのでは・・・)「やっぱり手元に欲しいんですよ」と言いながら興味深い資料(結構高額でしたが・・・)を購入。まあこのお店は並みの図書館以上に資料が揃っているので「ここで無けりゃ国会図書館へ」と言うお言葉はある意味凄い自信なのかも?
今日の収穫はレコード音楽雑誌「ディスク」(もうDisquesではなく日本語表記になってますね)の昭和16年3月号。巻頭特集がバッハの無伴奏チェロ組曲(カザルス)の紹介。次に皇紀二千六百年奉祝樂曲レコード(シュトラウスやイベールなど世界各国の著名作曲家に記念作品を依頼したもの)の紹介。
チェンバロ関係の記事としてはあらえびす氏のエッセイ「一枚から一千枚まで」。クラヴサンの紹介文の冒頭で「クラヴサン(ハープシコード)という楽器は。日本に一、二台しか無く、私もまだその實物を見たことも無いが、どういふものか、その夢見るやうな音色が、日本人の好みにピタリとするらしく、日本のレコード愛好家には。クラヴサンのレコードを集める人が甚だ少なくない・・・」という部分が興味深い。昭和一六年にもう日本に二台(?)のチェンバロがあったようながら(東京の大倉男爵と黒澤氏の楽器、もしくは神戸のスイス人の楽器のどれかか?)、あらえびす氏ほどのバロック好きな愛好家が生音を聴いた事が無いとなるとまだ東京の演奏会では登場していなかったのでは?と推測する次第。しかしこの表記でエタ・ハーリッヒ= シュナイダーの持ち込んだチェンバロ(昭和一六年五月頃日本に到着)が本邦初では無いと言えそうですね。他にも「音樂史的鑑賞」という記事では伊太利器楽音楽の紹介としてフレスコバルディの特集。(渋い!) 今回はこの雑誌の他に昭和一二年の音樂年鑑も入手。当時の演奏家や公演会場、音大等音楽界の綿密な紹介などどのページも興味深いものばかり。(洋琴界の大御所井口氏がウチの近くにお住まいだったとはビックリ)
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