1月17日、阪神淡路大震災からもう16年、改めて震災の犠牲者の皆様へ心からご冥福をお祈りいたします。
16年も経ちますと若者はほとんどこの震災を知らない世代となってしまいましたし、神戸の住民も震災後の転入者が増え地元でも当時の記憶がもう過去のものになりつつあるようです。年々この時期の全国ニュースの扱いが小さくなってきているのも寂しい限り。しかしその悲惨さと教訓はやはり体験者が後世に語り継ぐべきものではと思います。近代日本で初の大都市直下型地震をチェンバロやポジティフオルガンを持ちながら経験した身としては、その体験談を今後の皆様の対策の知恵として語り継ぐべきかと思います。楽器を持つ身としての個人的な体験から来る話ばかりですが皆様の今後の参考になれば嬉しいです。(今回もチェンバロの話限定ですが)
* 震災直後は楽器などは二の次、まずは身の安全の確保が優先、しばらく(数日から数週間)放置しても良いような状態で日頃から楽器は管理すべし。チェンバロなら弾かない時はフタを閉めてカバーを掛ける。前パネルをしていると倒壊した中でも楽器の強度は保持出来るのでさらに安全。また日本家屋なら崩れた土壁の粉塵の浸入防止にもなる。夏冬だと放置された楽器は長期間厳しい環境にさらされる覚悟が必要。
* 周辺地域の火事の発生に注意。消防車の来ない火事は延焼必至。江戸時代同様現場から逃げるしか無い。地震から相当時間を経て発生する火事も多いのも厄介。(停電復旧直後に倒壊家屋の電気機器のショートからの火災など) 避難する場合も電気関係にご注意を。
* 震災直後は現場では異常な興奮状態のはず。本人にとっては大切な物でも他人には「無用の長物」。下手に持ち出した楽器が暖を取る薪代わりにされる危険もある。状況を判断しながら避難すべし。 阪神大震災の日は今日のような極寒の日でしたので避難した学校で一同寒さに耐えきれず御近所の倒壊した家の一部をお願いして頂戴し校庭で燃やしてやっと暖を取った憶えがあります。
* 火事場泥棒が多発。避難から戻ると荒らされていたという事例多し。自分の財産は自己防衛の必要あり。 実は神戸でも多発していたようです。(ほとんど報道されていませんが)
* 救助活動が末端まで行き渡るには2~3日掛かる可能性あり。自前の飲食料で数日耐えられる用意が必要。 神戸でも当日はほとんど食料は来ず安定して非難物資が届いたのは3日目以降でした。しばらく自給自足となると非常食の他にカセットコンロなどが重宝。
* 被害地によってはライフラインが数ヶ月ストップの可能性あり。神戸の私の家では電気は1週間、電話は2週間、水道は1ヶ月、ガスは2ヶ月ストップしておりました。例え家に住めても不便な生活が長期間続く可能性が大きいです。電気が使えないのも困るものの水が使えないとトイレ・風呂・洗濯などが制限され本当に辛いものです。バケツやポリタンクは必需品。
* 楽器の保管が困難な場合は早急に移転先を確保すべし。ただし運送の困難は覚悟。 幹線道路は殆んど通行止となるので例え車が利用出来ても目的地へ向かえない場合あり。
当時のことを思い出して挙げましたが、少しでも皆さんの参考になれば嬉しいです。
せめて今日は皆さんにもし地震に遭遇した際のことなどを考える日にしていただければと思います。
(写真は震災当時楽器庫として借りていた一軒家、2階部分が一部落下するなど建物は激しく倒壊してしまいましたが幸い中に保管中のチェンバロは日頃からカバーや毛布をかけていたお陰でほぼ無傷で瓦礫の下から救出することができました)
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