日本古楽界の源流を探る(14)
3日、昭和初期の日本での古楽ブームを検証するシリーズ、今年も多彩な資料を紹介予定です。今日は先日入手した「ピアノ読本」(昭和11年(1936年) 野村光一他共著 清教社刊)のご紹介。このピアニストやピアノ音楽愛好会向けの教本、まずピアノ音楽発達史(亜米利加の解説書をベースに野村氏が執筆)として最初に各鍵盤楽器を紹介。クラヴィコードに5ページも割いているのにハープシコード(チェンバロとは呼んで無いですね)に3ページというのが少々不思議、曲解説でもバッハのクラヴイール作品の大部分はクラヴィコードの為に書いたと断言(伊太利協奏曲はハープシコードの為のみと区別して解説)、この偏りは1930年頃の亜米利加でのドルメッチによるクラヴィコードブームの影響なのか?
ピアノフォルの解説としてはクリストフォリからのジルベルマン(バッハとの逸話有り)、シュタイン、シュトライヒャ、ブロードウッドとモーツァルトとベートーヴェン関連の製作家については詳しく記載するもそれ以後の記述は無し。この時代、演奏可能なチェンバロやフォルテピアノがあまり(殆んど?)無かったためか各楽器の誕生前後については興味があるものの発達史についてはほとんど研究が進んでいなかった様子。作曲家の紹介ではバロック時代に全体の1/4ものページを割いて伊仏独英の作品を詳しく解説。その中でやはりバッハの作品が一番分量が多く有名曲を網羅、しかしゴールドベルグ変奏曲がまだ記載されていず元ネタの資料がランドフスカがこの曲を紹介した1933年以前のものだったのでは?と推測。「平均率洋琴曲集(平均率クラヴイコードとも表記)」はもう「音楽家の聖書」と呼ばれ神格化されている様子。(第1巻の自筆譜あのグルグル紋様の表紙の写真が大きく掲載) まだ日本では古楽器での生の演奏を聴く機会が無い時代ながら(チェンバロの本邦初演奏は昭和16年?)、古楽に対してこれほど詳しい知識を持っていたのには驚嘆。
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