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2010年11月10日 (水)

日本古楽界の源流を探る(9)

Disque_29 昭和初期の古楽ブームを検証するシリーズ、今回は昭和13年(1938年)1月号の洋楽レコード専門雑誌「Disques」から。この号も表紙はパイプオルガンを弾く天使(これまた古楽情報誌のようなデザインでは) この雑誌、タイトルや1月号の表記を仏蘭西語にしているのも当時の知識人の粋さの表れなのでしょうか? しかし記事の最初に支那事変勃発後のレコード業界の混乱と苦悩を匂わせた歯切れの悪いコメントを掲載、息苦しい時代に突入しつつも音楽上の愉しみは何とか維持したいとの思いが伝わります。

Disque_30まずページをめくるとシュヴァイッアーのバッハのオルガン音楽のレコード(7枚組)の大宣伝が登場。この時代日本では生演奏をほとんど聴けなかったと思われるオルガン演奏(どなたか当時のオルガン演奏の状況御存じでしょうか?)、それも高額になるはずの7枚組の盤を力を入れて宣伝しているところを見ると結構な枚数が売れたのでしょうか。

Disque_31_3この号の冒頭特集は宣伝とタイアップだったのか、あらえびす氏による上記のバッハのオルガン盤の紹介記事。筆者はシュヴァイツァー氏のバッハ演奏を「不純なメーキャップを洗ひ落としたバッハ」と表現し、彼の本来のバッハ演奏を追及する姿勢を大いに絶賛。「現代の発達したオルガン、或は危機的に発達し過ぎたオルガンの行き過ぎた表現力に満足せず、演奏家の意図と思想と趣味を、極めて直哉に表現し得る「古いオルガン」を捜したと言われている」とシュヴァイツァーの演奏姿勢をその生涯と共に詳しく紹介。文章の中に「トーキーの音楽や、電気ピアノ、テレミンの音が何とデリカシーを欠いたものである・・・」との記述があり、もうこの時代電気ピアノ(どんな楽器だったのか興味深いのですが)やテレミンが日本で知られていたのには驚きました。(この時代は何故かテレミンと表記。最古の電子楽器テルミンは1919年発明、1928年頃アメリカで発売開始なので1938年となるともう日本でもその演奏は聴けたのかも・・・。これも研究対象です)

Disque_31この頃の連続掲載の記事であった「ディスク蒐集講座」、この号は「バッハ・ヘンデルの同時代者」特集。取り上げられている作曲家はコレッリ、ジェミニアーニ、ヴィヴァルディ(まだ四季は知られていなかった様子)、タルティーニなどがVn作品として、クラヴサン作品としてはFクープランを筆頭にラモー、ダカン、Dスカルラッティ、そしてCPEバッハ、JCバッハが紹介。最後に何故かグルックを特別枠で丁寧に紹介、彼のオペラ作品を詳しく解説しております。(この時代人気があったのか?)

他にも「名盤秘曲集」(10枚組)という企画盤の紹介では、パハマン、ティボー、カサルス、プランテ(1839年生まれ!)、ヴィニエス、エネスコ、カペーと古今の名手揃いの中で企画者は「1枚目はランドフスカ!」と宣言しており、もう彼女は別格の扱いだった模様。しかしこのラインナップの中でトップを飾るとは・・・。

新譜紹介では残念ながらバロック物は少ないものの、ダンスミュージックで御贔屓のジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリの丁寧な紹介があり嬉しい限り。

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