日本古楽界の源流を探る(10)
昭和初期の古楽ブームを検証するシリーズ、今回は昭和13年(1938年)八月号の洋楽レコード雑誌「Disques」より。表紙はVnを演奏する骸骨と少々不気味(ロックグループGratefulDeadのジャケットと言っても通用するのでは)。今では想像出来ない重苦しい雰囲気が漂っていたのでしょう。(もう洋楽愛好家も肩身が狭かったのでは?)
冒頭特集は新発売のランドフスカ女史のハイドン「クラヴサン協奏曲」を紹介。この時代となるとクラヴサン作品も違う演奏との聴き比べが出来始めたようで、同じチェンバロ奏者として日本でも多くの盤を出しているシャムピオンの演奏(ただしこの曲はピアノで演奏とのこと)と比較しており、筆者はやはりこの曲はランドフスカのクラヴサンの演奏で聴くべしと言っております。最後にランドフスカの最新録音の情報(ヘンデルの協奏曲)にも触れておりこの時代の彼女への注目度の高さを再確認。
他の記事としてはお馴染みの連続掲載「ディスク蒐集講座」、今回はモーツァルト。ピアニストではEフィッシャーが大人気で他にはシュナーベル、ルービンシュタイン、「戴冠式」はやはりランドフスカのPf演奏盤がイチ押しとのこと。フルートではモイーズの独占場。
この時代やはり戦時色が濃く、「今後のレコード界」という特集では「統制下のレコード界の行くべき途」や「現時の状勢下の愛好家の心構へ」なる重苦しい記事が並ぶも、そのすぐ後に「米国ダンスバンド人気投票」なる記事を持ってくるところに心意気を感じます(深読みかも?) スヰングバンド部門では、1)Bグッドマン 2)Tドーシー 4)Aショウ 5)Dエリントン(黒) 10)Cベイシー(黒) 12)Gクルーパ という順位。しかし(黒)という表記も凄い! 差別なのか区別だったのか・・・。
国内新譜情報には目ぼしいバロック作品は無し(もうブームは下火になって来ていたのか?) 海外盤新譜では仏蘭西からクラヴサン奏者のルヂェロ・ヂェルランの二枚の盤が発売とのこと。
最後のページには「著名演奏家の写真を特別に分譲致します」というこの雑誌の出版社からの広告があり、その中でカサルス・クライスラー、コルトーなどの有名人に並んでランドフスカ(それも二種類提供とあります)の名前も!この時代、ランドフスカのレアな写真(市場に出ていない新写真ばかりとうたっています)を求める人が多かったというのは彼女の人気の高さがいかに凄かったかの証拠では。(リストの中にフルトヴェングラーの名前が無いのが不思議、この時代まだ神格化されていなかったのか?)
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