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2010年11月 2日 (火)

日本古楽界の源流を探る(5)

Disque_18昭和初期に我が国で起こっていた古楽器ブームを検証するシリーズ第5回、今回は昭和11年(1936年)9月号のレコード音楽雑誌「Disques」を拝見。冒頭のレコード広告を見ていますとEフィッシャー(Pf)のバッハ演奏(平均律や半音階などが目立ちます。バッハの有名チェンバロ曲は一通りレコードで聴ける時代になっていた様子。

Disque_19この号の目次を見ると冒頭特集はちょうど2度目の来日を果たしたJティボー氏のインタビュー。この来日時に彼はヴェラティーニのソナタを日本ビクターに録音(海外の大物が日本で録音することはまだ珍しい時代です)し日本のクラシック愛好家の間で大きな話題になった様子。

Disque_192次の特集は「ランドフスカ女史に依るヘンデル「組曲集」を讃ふ」(杉浦繁) もうチェンバロ奏者などと肩書や説明をしなくても「ランドフスカ女史」だけで通用する時代になっていたのでしょう。「ワンダ・ランドフスカ女史がヘンデルのクラヴサンによる組曲を吹き込んだというニュースを耳にしてから、もう数ヶ月を過ぎて仕舞った。日本プレスが概に発売されてもよさそうなものであるが、未だに出ない様であるから此慮にその試聴記を書くことにする・・・」というこの録音に対する期待の高さを物語る文章から始まる記事は、「組曲の主題は相異なる舞曲、器楽的様式はフランスのリューテニスト、即ちシャムボニエール、ダングルベール、大クープラン等のクラヴサン学派から多大の影響を受けている。事実リュート曲作法のスタイルはバッハ、ヘンデルの二巨匠に依って基礎づけられたと云ってよい・・・」とどこぞの音大の試験に出てもオカシク無いような解説を交えてこの話題の輸入盤を紹介。最後に「女王ランドフスカ女史の演奏に付いては今更なんの賛言をも必要としない。全く敬服すべきもので、先の「ゴールドベルヒ変奏曲」「クープラン集」「スカルラッティのソナタ集」と共にレコード史上を飾る逸品である。レコーディングも美しく、その日本プレスを待つものは筆者1人ではあるまい」と最上の賛辞を送っています。当時これほどの評価を得ていた演奏家はまだ少なかったはず。人気の程を伺えます。

Disque_193レコード試聴欄では「バッハ「オルガン協會」のレコード」(土澤一)の記事も。「バッハはその生涯を、殆んど教會のオルガン奏者として送過した人で、決して大きな野望を抱いて闘つた人ではなかった~」という「聖人バッハ」のイメージを呼ぶような紹介を交えて、「オルガンこそはバッハに自由の精神と力とを興へたのである。自己の大きな勝利をかち得て、深い表現をオルガンを通じて表現したのである~」とオルガン作品を絶賛しています。この時代、日本にはまだ僅かのパイプオルガン(数十台?)しかなかったはず、パイプオルガンを知らぬまま聴いていたとは思えない思い入れある文章には驚かされます。演奏はアルバート・シュヴァイツァ教授とあり、当時彼はすでに「オルガン演奏もする宗教家兼医者」として認知されていた様子。

この号、最後に「第1回ディスク賞レコード撰定」報告という記事があり、読者による当時の発売レコードの人気投票の結果が発表されており、交響曲部門は「第九」(ワインガルトナー指揮ウィーンフィル)など、管弦楽曲は「バッハロ短調 第二組曲」(メンゲルベルク指揮コンセルゲヴウ交響楽団)「ヘンデル水上の音楽組曲」(ハーティ指揮倫敦フィル)など、ヴァイオリンはクライスラーやティボー、シゲティ、ピアノはコルトーやケンプ、シュナーベル、ギーゼキングが人気、器楽分類の中にピアノ、ヴァイオリンの次にオルガンが登場するのが不思議(もうそれ程人気がある楽器になっていたのか?)。ブレエとデュプレというOr奏者が人気だった様子。其の他の器楽曲としてランドフスカの「クープラン曲集」「ゴールドベルヒ変奏曲」「調子の好い鍛冶屋」の3枚が選定(オルガンはジャンルに掲載されチェンバロはその他というのは何故?) 宗教曲ではヘンデル「救世主」(ビーチャム指揮英国放送協會聖歌團管弦楽オルガン伴奏)など。こうやって当時の人気盤を見てみるとやはり当時の日本人のバロック作品の贔屓振りが窺えます。

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