日本古楽界の源流を探る(1)
13日、現在訳あってチェンバロや古楽復興の歴史を調査しており数年前に岡山の古本屋で偶然見つけた昭和初期の音楽雑誌を参考のためにと久々に再読したところ(実は余り詳しくは見てなかったのですが・・・)日本古楽史の定説を覆すような驚きの内容盛り沢山でしたのでここで少しづつ分けてご紹介します。月刊「Disque」は昭和5年創刊の新譜レコード紹介を中心とした音楽雑誌。(東京市京橋区銀座6丁目1番地 グラモヒル社発行) (価格1部三拾銭 半年分一円五十銭 一年分三円) まずは私が入手した一番古い号を取り上げます。
昭和7年(1932年)9月号、約70ページのコンパクトなレコード音楽雑誌。表紙は「ディスク九月号」(この時代はまだ日本語表記)「Revue des discs et gramophones」とシンプルなデザインながら洒落た文字。記事の前後にレコードや蓄音器・楽器・音楽書の宣伝多し。この時代のオーディオ(?)はまだ手回し蓄音器が主流、レコードはコルトーやティボー、カザルス、クライスラーなど有名どころが目白押し、輸入盤屋のリスト(HMVレーベル)には早くも(Clavecin) Landowska Fantasia/Passpied (3.5円) Pastral(Scarlatti) (3.5円) との案内が・・・ 昭和7年にもう日本でランドフスカのチェンバロ演奏がレコードで人気が高かったことが窺え興味深いです。
目次を見ると冒頭がAコルトオ指揮の巴里・エコール・ノルマール室内管弦團演奏によるバッハの「ブランデンブルヒ協奏曲3番&6番」の試聴評。「バッハのブランデンブルヒコンチェルトはケエテン滞在中(1717-1723)の作曲で・・・」というような中々詳しい解説を5ページ、中には「フルトウェングラーはこの曲をベートオヴェンかワグナーでも演奏するように大掛かりに扱っていたが、コルトオは形式は非常に古典的でオーケストラの編成も殆ど原作の指定通りであろうと思われる~ゲネラルバスには忠実にツェムバロが用ひられている位であるから多分異なる所は使用楽器が古代の形式の物ではない位なのではあるまいか」との記述も・・・(この時代の検証としてはなんと古楽器を意識していることか!) レコード紹介のページではバッハ・カンタータ第四番・第百四十番(ミレー指揮バルセロナ市カタローニア合唱団)が冒頭の推薦レコードに。日本盤新譜紹介にはレイニー作曲「フルートとハープシコードへの奏鳴曲」(Ft Jナダ&Hpd Jホーレンマン) 解説の中でハープシコードとチェンバロの名称が混然と使われているのが面白い。他に「アレグラメンテ」(エールトン/カサドウス編) ハープシコード演奏 レジナ・バトリニ・カサドウス という盤も。楽器名称も「セロ」「フリユート」、作曲家も「ベートホベン」「ドウビユッシイ」など時代を感じさせる表記多し。それにしても1934年に日本でこれほどチェンバロ演奏のレコードが発売されているのには仰天でした。今後このシリーズまだまだ続きます!
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