2010春 欧州楽器探訪レポート その2 「16f付きチェンバロの復活」
20日、欧州楽器探訪レポート・その2は「16f付きチェンバロの復活」 今までバッハも所有していたという話はあるものの、実際にお目に掛かる事が無かった16fチェンバロ、今回は復元楽器を6台も拝見、2つのコンサートでその迫力ある音色を聴くことが出来た次第。最近はこの幻の楽器も再評価されているのか製作家も積極的に作っている様子。
現存する16fチェンバロと言えばブリュッセルにあるHassの楽器がまず有名では。(Rプヤーナが所有の3段鍵盤のHassは今どこにあるのでしょうか?) 何故か長い間チェンバロの歴史の中では異端児扱いだった16fチェンバロ。近年ヒストリカルタイプの楽器が少しづつ登場しておりました。私は2000年にライプチヒのゲバントハウスホール所有のオランダ製の楽器をコンサートで調律しましたし(何故ホールがこんな楽器を持つのか驚きましたが)、名手Aシュタイア氏は自己のフランス製の楽器で演奏や録音活動をしてます。日本でも高橋辰郎氏作の3段鍵盤の楽器が活躍中(1990年作!と時代の先取りでしたね)。
ハンブルグで積極的に16fチェンバロを製作中のM・KRAMER氏の工房では16・8・8・8fの2段鍵盤イタリアンというユニークなモデルを拝見。 歯切れの良い音色は弾き振り楽器には最適と人気だとか。KRAMER氏はもう10台以上も16fチェンバロを製作とか。日本ではいわきアリオスにも彼の豪華な16fチェンバロ入ってますね。
ただ16fチェンバロは巨大で重量もヘビー級。私が見たハンブルグでのコンサートでは素人のお手伝いと2人で道具も無しにヒョイヒョイと簡単に運んでましたが日本では無理だなあ・・・。でもAシュタイア氏の楽器はヨーロッパ人でも音を上げるほど重いのだとか。
ベルリンの楽器博物館ではちょうどバッハ所有と伝えられている16f付き「バッハチェンバロ」がテーマの企画展を準備中で、2種類の16fチェンバロの復元モデルを拝見。バッハチェンバロは弦も外された状態でその音色を確かめることは出来ないものの100年以上に渡り多くの製作家に影響を与えた重要なモデルだった様子。それにしてもナンとも素っ気無い姿では。
今回のために復元された(?)16fチェンバロ、1台はバッハチェンバロを参考にしたモデル(ザクセン風と言うべきか)、もう1台はハンブルグ系のモデル。16fの楽器の流派の違いを実際に聞き比べられるとは贅沢な企画。力が入っている企画展なのか館長直々に解説いただき感謝(鍵盤楽器がご専門だとか)。
16fチェンバロの復元楽器として驚いたのはヒストリカルチェンバロ復興の元祖、名工スコブロネック氏の第1号はナンと16fチェンバロ。そのお話は次回に詳しく。それでも彼の楽器がもう博物館の所蔵品になっていることには驚きました。20世紀後半の古楽復興運動の中でほとんど忘れられていた16fチェンバロがここ最近再び注目されて来ていることを確認出来たのは大きな収穫。「レオンハルトが長い間16fチェンバロには否定的で(今でも?)皆関心を示してくれなかったので、最近の関心の高まりは非常に嬉しい!」と某製作家が本音を漏らしておりました。
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