名工のサイン
14日、とうとう東京も梅雨入り。スタジオは幸い楽器に快適な湿度・温度をキープしているので変化も最小限。朝から、まもなく来日のオランダの老マエストロのリサイタルで使うチェンバロ2台の調整。まずは今年80歳というドイツの名工・スコブロネック氏作のイタリアンを調整のため総分解。普段ネームボードに隠されて見えないピン板部分に製作家の名前と1980年という製作年、No49という製造番号がサインされてます。お人柄なのか結構ラフなサインですね。この方、外装などは実にシンプル(素っ気無いというか装飾に興味が無いというか・・・)、ドイツ人らしい質実剛健な気質の様子。
もう一台のフランスの名工・アンセルム氏作の初期フレンチも総分解して調整。こちらは驚くほど丁寧な木工技術に感心。そういえば日本に来てから約10年経ちますがほとんど調整要らずのお利口な楽器。ツメはたった1・2本しか交換していないのでは。
2台のチェンバロ共、老マエストロ好みの独特のタッチに調整するも果たして当日すんなりOKが出るかが少々心配か。3年前は「僕の好みだともう少し調整を変えたいのだけど君の楽器だしねえ・・・」「マエストロ、お好きなようにどうぞ調整してくださって結構です」「いいんだね!」との会話があり、気が付くとダンパーを思いっきり切られてしまった経験あり。ヨーロッパの演奏家に話を聞くと「音楽祭で皆のリサイタル用に用意したチェンバロを彼が先に弾いたら思いっきり調整を変えられて弾きにくかったぞ」などとの評判も聞きました。今回はどんなご要望があるか楽しみでもあり心配でもあり・・・
夕方から留学中の方の留守宅で日本の大御所H氏作のチェンバロ2台のご機嫌伺い。数ヶ月も放置していたせいか断弦や弦の緩み、ツメのトラブルなど各所で「機嫌ワルイゾ~」と楽器が叫んでいる様子。私も朝からドイツ・フランスの楽器を触っていていきなり日本製に出会って「ちっとも言葉が通じないゾ~」と戸惑い気味に調整開始。色々な角度からご機嫌を取っていると楽器も段々調子が出てきたのか最後には「ちょっと艶っぽい音色かも?」という程音色が変化し私も少し安心。
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